朝生<あさなま>

菓子屋が朝仕事で出来る、短時間で安い菓子を指す。団子・饅頭・大福など。これに対して羊羹・外郎など時間をかけて作る高級菓子を、上生(じょうなま)。その間にあたる菓子を、中生(ちゅうなま)という。

・小豆<あずき>

マメ科の一年草。原産は中国で、日本では現在北海道が最大の産地である。種類は、粒の大きさから大納言・中納言・少納言や、色から赤小豆・白小豆などと分類されている。一般に和菓子の材料には、丹波産の大納言が珍重される。

・甘納豆<あまなっとう> 

小豆・白いんげん・金時豆等の豆類を、糖蜜で煮詰めまわりに砂糖をまぶした物。

・飴<あめ>

糯米(もちごめ)・トウモロコシ・芋等のデンプンを、麦芽で糖化させたもの。砂糖が普及する以前の代表的な甘味料で、古くは「日本書記」にも記載がある。

・あられ 

餅を小さく切って乾燥させて炒った物。醤油・塩・砂糖等で味付けがされている。関西では「おかき」・「かき餅」と言う場合がある。

・有平糖<あるへいとう> 

南蛮菓子アルフェロア(alfe'loa:ポルトガル語の砂糖菓子)に由来する干菓子。砂糖と水飴を煮詰めて作る。

・餡<あん>

豆を煮て砂糖で味付けした物。通常小豆を用いて作るが、白小豆・白いんげん・手亡を使うと白あんになる。

・外郎<ういろう> 

米粉・糯粉・葛粉・蕨粉・白玉粉に、砂糖を加え練り合わせ蒸した棹物。抹茶・黒砂糖などを入れることで多彩な色と味に仕上がる。中国の役人で後に日本に帰化した「陳外郎」の名が由来と言われている。現在では小田原・名古屋・山口等が有名。

・浮き粉<うきこ>

水の中に小麦粉を入れて浮いてきたデンプンを乾燥させて作った粉。

・打ち物<うちもの>

微塵粉黄粉等を砂糖や水飴と加え、木型に入れて固め打ち抜いた物。干菓子の総称で、落雁はその代表的な物。

・押し物<おしもの>

材料は、上記の打ち物と同様だが、木型に押して固めた物。

・小倉<おぐら>

大納言小豆を使ったものの呼び名で、羊羹にすれば「小倉羊羹」、粒あんにすれば「小倉あん」になる。

・おはぎ 

糯米と粳米を炊き上げそれを少しつぶし、おにぎり状にしてまわりにあん又はきな粉をまぶした物。春・秋の彼岸の供え物として家庭でもよく作られる。春は「牡丹餅」(ぼた餅)、秋は「萩の餅」(おはぎ)とも言われる。

・主菓子<おもがし>

茶事に使う生菓子のこと。きんとん・練り切り・薯蕷(じょうよ)饅頭などの上生を指す。主菓子の対語は、干菓子になる。

・カステラ 

16世紀あのフランシスコ・ザビエルなどと共にポルトガルから海を渡ってきた南蛮菓子がルーツである。元々の名前は、パン・デ・ロー(Pao de Lo:ポルトガル語)と言われるが、このお菓子の生まれが今のスペイン、当時のカスティーリャ王国でそれがポルトガルに伝り、日本伝来の際ポルトガル人が、「カスティーリャのお菓子」と答えたので日本では「カステラ」と呼ばれるようになったのではないかと言われている。今でも伝来地長崎には、名店が多い。

・かりんとう 

駄菓子の一種で小麦粉に水飴を混ぜて乾燥させた後、油で揚げ砂糖などをりんかけしたもの。

・軽羹<かるかん> 

山芋・米粉・砂糖で作った蒸し菓子。特に今では少なくなった自然薯を使った物は、独特の粘りを持ち高級とされる。南九州特に鹿児島の名物とされる。

・寒天<かんてん>

テングサより抽出した液を、凍結乾燥させた物。和菓子では羊羹等に使われる。長野などでは、寒い時季この寒天を乾燥させている様子を見ることが出来る。

・寒梅粉<かんばいこ>

焼き微塵粉をさらに細かくしたもの。関西方面の打ち物に使われる事が多い。梅花のころ作ると良い物が出来るので、この名前が付いたと言われている。

・黄双<きざら>

白ざら糖の精製前の状態。

・黄粉<きなこ>

大豆を煎って挽いた物。餅にまぶしたり、打ち物の材料にする。青大豆を使った物は、うぐいす黄粉などとも言う。

・求肥<ぎゅうひ> 

白玉粉を水で溶き蒸し上げ、砂糖や水飴を練り込んだもの。当初は玄米を使っていたので薄黒い色に仕上がった。それを牛の皮膚に見立て「牛皮」と読んでいたが、後に「求肥」に転じた。現在では福井の「羽二重餅」熊本の「朝鮮飴」などが代表的な求肥のお菓子である。

・錦玉羹<きんぎょくかん> 

寒天を煮溶かし砂糖・果汁等を加えて冷やし固めた物。いわゆる俗に言う「かんてん」である。見た目に涼しいので夏の和菓子には欠かせない。なお、泡立てた卵白を加えて出来た物は、「淡雪」と呼ぶ。

・金つば<きんつば> 

四角形の餡を薄く溶いた小麦粉で包み、鉄板の上で焼いたお菓子。現在の物は、四角形が多いが、元来は名前の由来通り刀の鍔に似せていたので丸が多かった。神戸「本高砂屋」が全国的にも有名。

・金団<きんとん>

餡や求肥玉に、練って裏ごしにしてそぼろ状にした餡をまぶした上生菓子。様々な色に着色して季節感を出すことが出来るので、茶事の主菓子の代表選手である。元々の名前は中国の「こんとん」からではないかと言われている。京都の松屋常磐のきんとんが有名。

・葛粉<くずこ>

マメ科の葛の根から取り出したでんぷんを乾燥させた物。煮溶かすと粘りが強く、極めて透明に近い。葛粉を使った葛桜・葛切りは夏の冷菓に最適。一般に奈良の吉野の葛が最高級とされる。

・氷餅<こおりもち>

餅を寒中で凍らせて脱水したもの。上生菓子の材料として使われる。

・小麦粉<こむぎこ>

「粉」の中では、もっとも一般に知られた「粉」。小麦粉は、強力粉・中力粉・薄力粉があるが、和菓子では薄力粉を使うことが多く、強力粉を多用する洋菓子とはある意味対をなす。

・金平糖<こんぺいとう> 

カステラなどと同じ南蛮菓子の一つ。コンフェイト(confeito:ポルトガル語の砂糖漬け)が起源。芥子粒を核にして水に煮溶かした氷砂糖に、小麦粉を入れて着色それを攪拌するとあの角が出来る。

・棹物<さおもの>

羊羹や外郎などのように、細長く棒状に作った菓子。

・桜餅<さくらもち> 

春を代表する和菓子の一つ。しかし同じ名前で地域によって形態が異なる。関東風は、小麦粉の薄い焼き皮でこし餡を包み込んだ焼き菓子。関西風は、餅か道明寺でこし餡を包んだ餅菓子。いずれも外側に塩漬けした桜の葉で包んでいる。東京向島「長命寺さくら餅」は有名。

・砂糖<さとう>

サトウキビ・サトウダイコン等を原料に作られた甘味料。結晶の大きさにより上白糖・グラニュー糖・白双等に分かれている。また黒砂糖は、サトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めた物で、含蜜糖と言い、その他は砂糖の結晶だけを抽出した分蜜糖と言う。

・砂糖漬け菓子  ※関係ページ

杏・リンゴ・キンカン・蜜柑・梨等の果物やゴボウ・生姜等の野菜を糖蜜で煮詰め、水分を飛ばした菓子。全国各地にいろいろな形態であるが、大阪八尾の「五智果」は有名。

・塩釜<しおがま> 

寒梅粉・砂糖・塩・海藻の粉末・紫蘇の葉などを混ぜて押し固めて成形した押し物。宮城県にある塩釜神社の祭神が製法を伝えたと言われているので、今でも仙台の名物である。

・塩煎餅<しおせんべい> 

粳米の粉を練って蒸し上げ、薄く延ばし乾かした後焼いた物。元来唐菓子の一つとされ、古くは空海が唐で煎餅の作り方を学んだと言われる。現在では埼玉の草加煎餅が有名。一般に「煎餅」とだけ言うと小麦粉・砂糖・卵で作った甘みのある物になる。

・薯蕷<じょうよ>

山芋のこと。薯蕷饅頭・上用饅頭は、この薯蕷をすり下ろしてつなぎとして皮に使った饅頭のこと。また薯蕷粉は、山芋を粉末にしたもの。

・上用粉<じょうようこ>

新粉よりもさらに細かい粉。またこれを薯蕷粉と呼ぶこともある。

・白玉粉<しらたまこ>

糯米を水を差しながら石臼で挽き、沈殿した物を乾燥させた物。弾力があり団子・餅菓子・求肥等に使われる。

・新粉<しんこ>

粳米を粉にして乾燥させた物で、米粉とも言う。上と並の2種類があり、団子・餅菓子に使われる。

・洲浜<すはま> 

大豆を煎って作った洲浜粉に砂糖・水飴を加えて洲浜形に作った菓子。洲浜形は、入江のある浜辺の姿を模した形。京都の植村義次の洲浜が有名。また、関東には形は同じで、餅菓子に「すはま・すあま」と呼ぶものがある。

・節分豆<せつぶんまめ>  ※関係ページ

「福は内、鬼は外」立春の2月3日の夜にはどこの家でも行われる節分の豆まき。元々の由来は、中国の故事に倣い平安朝の頃から大晦日の晩宮中の行事として、桃の弓矢にて鬼を追い払う「除災の儀」だと言われる。それがいつの日か庶民に広がり、節分の夜には豆をまいて疫鬼を追い払い、年の数だけ豆を食べて厄を払うようになったらしい。ちなみに立春の2月3日の晩は、旧暦の大晦日にあたる。 

・大福<だいふく> 

小豆餡を餅皮でくるんだもの。家庭でも餅つきの際作られることが多く、菓子屋では朝生として作られる。

・団子<だんご> 

米粉・きび・粟をこねて蒸したり、茹でたりしたもの。きな粉・餡・醤油など、様々な味・形がある。

・粽<ちまき> 

糯粉・葛粉で作った餅を円錐形にして笹の葉で巻き、藺草(いぐさ)で口を縛り蒸したり茹でたりしたもの。5月5日の端午の節句で食べる習慣がある。京都の川端道喜の「水仙ちまき」が著名。

・椿餅<つばきもち> 

餡入りの道明寺を椿の葉2枚で挟み込んだ菓子。唐菓子の果餅の1つで「源氏物語」「宇津保物語」等に「つばいもちひ」などとして出てくる日本最古の餅菓子。

・手亡<てぼ>

いんげん豆の一種で白餡を作る材料となる。

・唐菓子<とうがし>

7世紀に始まった遣唐使によって伝えられた菓子。「からくだもの」とも言う。米粉をこね、茹でたり油で揚げたりしたものが主だった。伝来以後平安時代には、八種の唐菓子・十六種の果餅が残ったとされるが、現在その製法は明らかで無いものが大半である。いくつか残ったものとして唐菓子の「団喜」に類するものが、京都亀屋清永の「清浄歓喜団」、果餅の「ほうとう」は甲州名物のほうとう、「ぶと」は奈良萬々堂通則「ぶと饅頭」が近いのではないかと言われている。

・道明寺<どうみょうじ>

糯米を蒸した後、乾燥させ荒く挽いたもの。椿餅・桜餅等に使用する際は、再度蒸して砂糖を加え着色する。粒のある舌触りが独特。由来は、大阪藤井寺にある真言宗の尼寺の名前で、そこで兵糧として作られたのが始まりである。

・どら焼き<どらやき> 

小麦粉・砂糖・卵を混ぜて作った生地を、鉄板で円形に焼き2枚で餡を挟んだもの。皮の形が銅鑼(どら)に似ているので、この名になったと言われる。一部には「三笠山」と呼ぶこともある。京都の笹屋伊織「どら焼き」は、こし餡を小麦粉生地で巻き込んだ棹物で一風変わっている。

・流し物<ながしもの>

その名のとおり、枠に流し込んで作った菓子。羊羹・錦玉羹等がそれにあたる。

・南蛮菓子<なんばんがし>

16世紀ポルトガルやオランダの宣教師によって伝来された菓子。このときコンペイトウ・タマゴソウメン・ビスカウト・パン・カステラボウルなどと伝えられ、卵・砂糖などをふんだんに使ったお菓子が登場してきた。当時はまだ上流階級の一部しか食べることが出来なかったが、後にカステラは長崎で、ボーロは佐賀で、タマゴソウメンは福岡で、現代に伝わるお菓子として発展した。

・肉桂<にっけい>

クスノキ科の常緑高木の樹皮から取った香料。一般的には「にっき」・「シナモン」とも呼ぶことが多い。

・練り切り<ねりきり> 

白あんに求肥をつなぎとして練り上げ、色付けし細工したお菓子。形・色を様々に変えられるので季節感が出しやすく、茶事の主菓子としてよく使われる。一般に関東ではよく作られるが、関西では求肥の代わりにつなぎとして小麦粉を使った「こなし」がよく作られる。

・葩餅<はなびらもち>  ※関係ページ

正月のお納め物の一つであり、近年では正月のお菓子として各地の和菓子屋で作られる有名な葩餅は、京の老舗で紹介した川端道喜の「菱葩」と言うお菓子が始まりと言われている。本来は、包み雑煮と言われ宮中の正月儀式に用いられていた。現在の「花びら餅」は、丸い白餅に小豆で染めた菱餅を重ね、ゴボウを2本のせ味噌餡をのせて二つ折りにした物である。また「花びら餅」は、裏千家宗家初釜のお菓子としても使われている。

・ぼーろ 

小麦粉・砂糖・卵で丸い器形に焼き上げたお菓子。元々はカステラと同じ南蛮菓子で、現在では全国各地で作られている。中でも佐賀の北島「丸芳露」は有名。

・松風<まつかぜ>

小麦粉に砂糖・水飴を混ぜ水でこねた物を、鉄板と天火で上下を焼き上げたもの。表面は茶色焼き目が付き裏面は白いままなのが特徴。このお菓子も地域・お店によって違いがあり、カステラに似た厚みのあるものや、煎餅の様にうすいものがある。京都「味噌松風」や熊本「菊地松風」は有名。

・饅頭<まんじゅう> 

小麦粉に膨らませるためのふくらし粉・酒種・山芋等を入れた生地に餡を包み蒸し上げた物。全国各地で様々な饅頭が作られていて、一般に酒種を使ったものを「酒饅頭」、山芋を使ったものを「薯蕷饅頭」、そば粉を加えたものを「蕎麦饅頭」と言ったり、饅頭という漢字も「万頭」「曼頭」「万十」などとも書くことがあるポピュラーな和菓子。饅頭の始まりは2つあると言われ、1つは元の国より来日した仏弟子の林浄因により伝えられ現在東京の「塩瀬饅頭」に伝わるとの話と、京都東福寺の開山、聖一国師が中国留学を終えて帰国後、托鉢の途中で茶店に酒饅頭の製法を伝え、現在の「虎屋饅頭」につながると言う話である。

・微塵粉<みじんこ>

道明寺をさらに細かくして粉末にしたもの。打ち物、押し物に使う。

・水飴<みずあめ>

米・芋等のデンプンを麦芽を用いて糖化したもの。お菓子の艶やなめらかさを出すのに使われる。

・村雨<むらさめ>

上用粉にこし餡を混ぜて蒸したもの。一方蒸し上げないものは、「しぐれ」と呼ぶ。

・最中<もなか> 

糯米を水でこね蒸したものを、薄く延ばし焼いた皮で餡を詰めた菓子。元々は円形に作って「最中の月」を表したといわれる。皮の形・中の餡は全国にいろいろな種類がある。現在では、アイスクリームの「もなかアイス」も一般的である。

・桃山<ももやま> 

白餡に卵黄・寒梅粉・水飴等を入れ形を作り、焼き目を入れた菓子。表面に味醂を塗ることもある。

八つ橋<やつはし>

米粉を練って蒸し、砂糖・肉桂・芥子を混ぜローラーで延ばし、きな粉を両面に振ったものを、琴の様に短冊状にして焼き弓形に仕上げた煎餅の一種。一方生八つ橋は、生地を蒸して薄く延ばし切り分けたもの。京都のお土産として有名。

・羊羹<ようかん> 

元来文字の通り「羊の羮(ひつじのあつもの)」、すなわち羊の肉に黒砂糖を練り合わせた「羊肝」で、中国では神仏への供物だった。日本では仏教の影響で肉類を禁じていたので羊の肉の代わりに植物性のもので代用した。当初、餡・砂糖・小麦粉・片栗粉といった材料で木枠に入れ蒸し上げた蒸し羊羹が主流だったが、その後寒天を使うようになり練り上げていく練り羊羹に取って代わってきた。今では、芋・柿・栗・水など様々な羊羹がある。

・落雁<らくがん> 

滋賀県大津の琵琶湖にある浮御堂の畔に舞い降りる雁の情景を打ち物にしたのが、落雁の始まりと言われる。現在では、干菓子の代表で、糯粉だけでなく麦・そば・豆・栗などでも作られる。金沢・森八の「長生殿」は、特に有名。

・和三盆糖<わさんぼんとう>

徳島・香川特産の最高級砂糖。サトウキビの茎を絞り、煮詰めて白下糖を作りその後手作業によって練る作業をする。これを「研ぐ」と言う。この研ぎの作業を盆の上で三度するので、和三盆という名前が付いたと言われる。打ち物・押し物の材料に、またはそのままでお菓子として売られる。